通常、小倉百人一首と称され、鎌倉時代の歌人藤原定家(京都嵯峨野の小倉山に住む)
の撰歌で、上代の天智天皇から鎌倉時代の順徳院までの約六百年間、百人の歌人による最も優れた和歌を、年代順に一首ずつ選んだものです。
 また、百人一首がかるたとして遊び始められたのは戦国時代からで、お正月遊びとして
一般の家庭でも行われるようになったのは、ずっと後の安政のころだといわれています。
現在では、歌集としてよりも、古典の入門書として教材に用いたり、特に正月の風物詩
として人々に広く親しまれている「かるたとり」が有名です。
 子どもの頃、意味も解らないまま、原文を暗記したものです。懐かしい響きが今尚心に残り、このたび「天草方言で読む 百人一首」をまとめてみました。

 天草方言で詠む「百人一首」 PDF  

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 You Tube  「百人一首」 朗読   http://claimant.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/youtube-1db4.html

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                   「百首を一気に読める」   http://www.youtube.com/watch?v=oMQbH88DXcs                     

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001 秋の田の 刈り穂の庵(いお)の 苫(とま)をあらみ わが衣手(ころもて)は 露にぬれつつ (天智天皇)
     収穫の秋 田の脇につくった仮小屋で 刈り上げた稲の番をしとれば
   苫の目が粗かけん 隙間から冷たか夜露が入って 着物ン袖は濡れっしもたヨ

      ※ 苫(スゲやアシなどを編んで作った家の囲い)

 

002 春すぎて 夏来にけらし 白妙(しろたえ)の 衣ほすてふ 天の香具山 (持統天皇)
       春が過ぎ去り 夏が来たごたる 天の香具山にゃ 白か着物バほしてあるバイ
   ※「白妙の」は、「衣・袖」に掛かる枕詞(まくらことば) 楮(こうぞ)の繊維で織った白い布)
     ※ 枕詞(まくらことば)とは、主として和歌に見られる修辞で、特定の語の前に置いて

             語調を整えたり情緒を添えることばのこと

 

003 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む (柿本人麻呂)
       山鳥の 垂れ下がった尾のごて 長か夜を 一人さびしく寝にゃんとじゃろかい
      ※「あしびきの」は、「山」に掛かる枕詞(まくらことば)  「山鳥の尾長」と「夜長」の掛詞
      ※ 山鳥は、夜になると雄と雌が谷を隔てて別々に寝るといわれている
      ※ 掛詞(かけことば)とは、同じ音、あるいは類似音のことばに、二つ以上の意味を込めて

           表現する方法


004 田子の浦に うち出でてみれば 白妙(しろたえ)の 富士の高嶺に 雪は降りつつ (山部赤人)
       田子の浦ン海岸に出て見れば 白か雪バ頂く富士山の高嶺にゃ 雪ン降りよる
         ※「白妙の」は、「富士」に掛かる枕詞(まくらことば) (梶の木の繊維で織った白布)
   
005 奥山に 紅葉(もみじ)踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき (猿丸大夫)
       奥山で 紅葉を踏み分けて (雌バ呼んで)鳴きよる鹿の声を聞けば
       秋はしみじみと 寂しさが感じらるっとよなぁ


006 鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける (中納言家持)
        鵲が橋バ掛くると言われる 天の川ン橋のごて見立てらるる 宮中の御橋に
白か霜ンおりとっとバ見れば 夜もだいぶん 更けよるばいなぁ


007 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも (安倍仲麿)
    天空を 振り仰いで眺むれば、あン月はたしきゃ 春日の三笠山に出ていた
    月と同じ月じゃろうでネ 懐かしか  ※「天の原」は、「ふりさけ見る」に掛かる枕詞
          
   ※ 安倍仲麿は唐へ渡り 玄宗皇帝に仕えた


008 わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり (喜撰法師)
    私の庵は 都の東南で 鹿が棲む心静かな所で 暮らしよっとに
    世を住みづらく思うて 宇治山に隠遁しとると 人達ゃ噂しとるそうにある
         
    ※「宇治山」と「憂し山」の掛詞


009 花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる 眺めせしまに (小野小町)
    花の色はすっかりあせてしもた 雨ン降りよっとを 眺めながらしみじみ思う
    我が身も そン花の色ンごて 衰えてしもたばい
     ※ 花の命と容姿が衰えてゆく我が身の哀愁を重ね合わせた
   ※「眺めしまに」は、「長雨」と「眺める」の掛詞
  ※ 小野小町(絶世の美女)は、在原業平に密かに思いを寄せていたといわれている


010 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢ふ坂の関  (蝉丸)
    これがあの有名な 東国へ行く人も 京に帰る人も
    知っとる人も 知らン人も ここで別れてもまた逢えるて
    言われとる 逢坂の関たぁ まこてー
   
011 わたの原 八十島かけて 漕き出でぬと 人には告げよ あまのつりぶね (参議篁)
    「大海原の多くの島々目指して 舟で漕ぎ出して行ったばい」ちゅて
    都の人たちに 知らせてくれナ 釣り舟に乗っとる人たちヨィ
               
 ※ わたの原(大海原)   ※ 参議篁は隠岐に流罪になった


012 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ (僧正遍昭)
    空を吹く風よぃ どうか雲の中の天女が通う道を 塞さいでくれぃ
    乙女たちの姿を もうしばらく 引き留めておきたかけん
           
013 筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる (陽成院)
    筑波の嶺から落流する男女川は わずかな流れが積り積もって深い淵になっとよネ
    私の恋心も 密かな思いが 深い思いになったとヨ
        
     ※「落つる」 天草方言「落つる」


014 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに (河原左大臣)
    陸奥のしのぶもじずりのごて 誰のせいでわたしの心は思い乱れていると思うネ
    みんなあなたのせいばい  ※ しのぶもぢずり(乱れ模様の染物)
           
015 君がため 春の野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ (光孝天皇)

    あなたに差し上ぎゅうどもて 春の野に出て若菜を 摘んどったりゃ
    雪がちらちら降ってきて 私ン着物の袖に降りかかったとヨ
   
016 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平)
    あなたと別れて わたしは因幡国(鳥取県)さん 行くばって
    稲葉山の峰に生えとる松のごて (あなたをマツのも マツのうち)
  あなたが待ちこがれていると聞けば たった今でん 都さん とんで帰るバイ
  
 ※「松」と「待つ」の掛詞


017 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣)
    神代の昔でも 聞いたこともなか 竜田川一面に紅葉が散りばめられ
    美しか唐紅色のくくり染めンごて 見ゆるなんちゅうことは
             
   ※「ちはやぶる」は、「神」に掛かる枕詞 ※「からくれなゐ」は中国伝来の鮮やかな紅色


018 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ (藤原敏行朝臣)
  住の江の岸に寄る波の「よる」じゃなかばって 夜でっちゃ
  夢の中の恋人が通う道でっちゃ あなたはどい人目を はばからすとじゃろかい
         ※「寄る」と「夜」の掛詞


019 灘波潟 短かき芦の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや (伊勢)
  灘波潟(大阪付近)の入江に生っている芦の 短か節の間ンごて ほんの短い間でも
    お会いできんままに いつまでもこの世を過ごせ ちゅうとね  ひどかネ
   
020 わびぬれば 今はた同じ 灘波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ (元良親王)
  こがんわびしか思いをしとれば 今はもうどうなってもよか
  いっそ あの灘波潟の「みをつくし」ということばのごて
  この身をつくしてもよか 今一度 あなたにお逢いしたかー
                     ※「みをつくし」は、「身を尽くして」と「澪標」(船の道しるべ)の掛詞