奥の細道  松尾 芭蕉

   天草方言で読む「奥の細道」 〈序文〉  PDF 
https://amakusa-web.jp/Sozai/Mg/FileAccess.aspx?aplUseNo=1384&angoFolderKey=zoq2a6AqTlkM7AZFp9mKvg%3d%3d&angoFileKey=W4yv8TgLB7vlJFNkgrezL00oCN5y0SIE

    ▲ クリックしてください。

 

  •     〈序文〉
     月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、
    馬の口とらえて老をむかふるものは、日々旅にして旅を栖(すみか)とす。古人も多く旅に死せるあり。
     予もいづれの年よりか、片雲(へんうん)の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、海浜(かいひん)にさすらへ、
     去年(こぞ)の秋江上(こうしよう)の破屋(はおく)に蜘の古巣をはらひて、やゝ年も暮、春立(たて)る霞(かすみ)の空に白川の関こえんと、そゞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神(どうそじん)のまねきにあひて、取(とる)もの手につかず。
    もゝ引の破(やぶれ)をつゞり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先(まず)心にかゝりて、住(すめ)る方は人に譲り、杉風(さんぷう)が別墅(べつしよ)に移るに、
     〈草の戸も 住替る代ぞ ひなの家〉
     面(おもて)八句を庵(いおり)の柱に懸置(かけおく)。
    〈意訳〉
      月日ちゅうのは、永遠に旅バ続くる旅人ンごたるもんで、来てにゃ去り、去ってにゃ来る年もまた同じごて旅人である。
      船頭として船ン上に生涯バ浮かべ、馬子として馬の轡(くつわ)バ引いて老いバ迎ゆる者ナ、毎日旅バして旅バ住処(すみか)にしとるごたるふうですたい。
      古人の中にゃ、旅の途中で命バ無くした人があまたおらす。
    私もいくつごろからじゃいろ、ちぎれ雲が風に身バまかせて漂うとっとば見たりゃ、漂泊の思いバ止むることがでけでにゃ、海ぎわン地バさすらい、去年の秋にゃ、隅田川のほとりンあばら屋に戻ってクモの古巣バ払うて、いっとき落ち着いとったばって、おいおい年も暮れて、春になり、霞ンかかる空バ眺めながら、ひょくっと白河の関バ越えてみゅうかにゃて思うと、さっそく「そぞろ神」がのりうつって心バ乱し、おまけに道祖神の手招きにおうては、取るもンも手につかん有様じゃった。
      そがんわけで、ももひきン破れバ繕い、笠ン緒バ付けかえ、三里の灸バすえて旅支度バはじむっと、さっそく、松島の名月がまず気にかかって、住まいの方は人に譲って、旅立つまで杉風(さんぷう)の別宅に移るこてぇして、そン折に、
     〈人の世の移ろいになろうて、草葺きのこン家も、新たな住人バ迎えるこてなる。これまで縁のなかことじゃあったが、節句の頃にゃ、にぎやかに雛バかざる光景がこン家にも見らるっじゃろう。〉
    ちゅて発句を詠うで、面八句バ庵の柱にかけてゑぇた。

 

 You Tube  4歳女児の朗読 http://www.youtube.com/watch?v=w_E-VscDqhM

                   ▲ クリックしてください。