「新古今和歌集」は、鎌倉時代初期1201年(建仁元年)~1210年(承元4年)後鳥羽上皇の勅命によって編まれた勅撰和歌集である。
 恋歌を抜粋して天草方言で意訳しています。

 天草方言で詠む〔新古今和歌集〕

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0990 よそにのみ 見てややみなむ 葛城(かつらぎ)や 高間の山の 嶺の白雲  (詠み人不詳)
   ただ他人ごとで 高嶺の花ンごて 眺むるだけじゃろかい
   あン葛城の高っか金剛山にかかる白雲ンごたる 高貴で美しか貴方を

 

0992 足曳(あしびき)の 山田もる庵に おく蚊火(かひ)の 下こがれつつ 我が恋ふらくは

           (人磨)
   山田を守る小屋にある蚊遣りの草が くすぶっとるごて
   私は心ン中で人知れず 恋い焦がれとっとヨ

        ※「足曳(あしびき)の」は、「山」に掛かる枕詞
   ※ 枕詞(まくらことば)とは、主として和歌に見られる修辞で、

             特定の語の前に置いて語調を整えたり情緒を添えることばのこと

 

0993 石上(いそのかみ) 布留(ふる)のわさ田の ほには出でず 心のうちに 恋ひや渡らん 

          (不詳)
   石上の布留の早稲田でン 梅雨の間は穂が出んごて 
   表にゃ出さんで 心の中で あなたを恋しゅう思うとっと

        ※「石上」は、「布留・古・降る」に掛かる枕詞

 

0994 春日野の 若紫の すり衣 しのぶの乱れ かぎりしられず  在原業平朝臣
   春日野の若紫で摺った衣のごたる 美しかあなたを拝見して 
   こン信夫綟摺(しのぶもじずり)の衣ンごて 忍心でひどう乱れとっとヨ

        ※「信夫」と「忍ぶ」の掛詞
        ※ 掛詞(かけことば)とは、同じ音、あるいは類似音のことばに、二つ以上の意味を込めて

             表現する方法

 

0995 紫の  色にこころは  あらねども  深くぞ人を  おもひそめつ  延喜御歌
   私の心は紫じゃなかばって まっで紫根が衣を染むるごて あなたを
   深う思うとっとヨ


0996 みかの原 わきて流るる 泉川 いつ見きとてか 恋しかるらん  中納言兼輔
   みかの原から涌き出て泉川になるごて いつ見た時から 
   こがん あなたを恋しゅうなったっじゃろかい

        ※「泉」と「いつ見」の掛詞


0997 園原や ふせ屋におふる 帚木の ありとはみえて 逢はぬ君かな  坂上是則
   園原の伏屋に生えとる箒木は 遠くからなろわかるばって 
   近くからにゃどけあるかわからんごてなる
   こん箒木のごて 会いに行たっちゃ なかなか逢うてくれんとね あんたは


0999 年月は わが身に添へて 過ぎぬれど 思ふ心の ゆかずもあるかな  西宮前左大臣
   あなたへの思いを抱えたまま 長い年月が過ぎてしもたばって 
   今まで打ち明けることもできんじゃった


1000 諸共に 哀といはずは 人知れぬ 問はずがたりを われのみやせむ  大納言俊賢母
   お互い一緒の想いであると あなたが打ち明けてくれんば 
   私は人知れず独り言を言うて 暮らすところじゃった


1001 人づてに しらせてしがな 隠沼の みごもりにのみ 恋ひや渡らん  中納言朝忠
    人バ介しても 私の秘めた思いを伝えたかネ 一面草に覆われとる
   沼の水ン中に隠れたごたる恋が このまま続くとじゃろかい


1003 から衣 袖に人めは つつめども こぼるる物は 涙なりけり  謙徳公
   衣ン袖に私の恋心は 人目につかんごて隠しとるばって
   隠しきれんとは あんたを思って流す涙ヨ

        ※「唐衣」は、「袖・着る」に掛かる枕詞


1005 あら玉の 年にまかせて 見るよりは われこそ越えめ 逢坂の関  謙徳公
   年月の流れに任せて あなたにお逢いできっとを待つよりも
   私があの逢坂の関を越えるごて 障害を乗り越えて逢いに行くけん

        ※「新玉の」は、「年・月・日」に掛かる枕詞


1006 我が宿は そことも何か 教ふべき いはでこそ見め 尋ねけりやと  本院侍従
   私の実家はここばいと 何で教えてさしあぎゅうきゃ 何も言わでにゃ
   私の家を探し出したかどうかを 見ることにしゅう 本気じゃいろ


1007 わが思ひ 空のけぶりと なりぬれば 雲井ながらも なほ尋ねてむ  忠義公
   私の燃え上がった思いは 既に空の煙となっとるけん 
   例え遠か雲の向こう(宮中)じゃったっちゃ 訪ねて参りましょうだ

    ※「堀河関白」・「忠義公」は、藤原兼通


1010 風吹けば 室の八島の 夕煙 こころの空に たちにけるかな  藤原惟成
   風が吹くと室の八島にたちこむる夕霧(煙)も 空に立っていくごて 
   私の心も夕暮になれば あなたへの思いも 立ちこめてくっとた


1011 白雲の みねにしもなど 通ふらむ 同じみかさの 山のふもと  藤原義隆
   どい近衛府の上司ばかり心をかけて 下官の私にゃ とんじゃくなかとネ


1013 つくば山 端山繁山 しげけれど 思ひ入るには さはらざりけり  源重之
   筑波山の周りン里山や 端山が 茂っとるごて 障害は多かばって
   歌垣の場所さん あなたに会いに行く決心をした私にゃ 障害にゃならんと