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天草俚諺集

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天草俚諺(りげん)  (PDF)
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 古くからことわざは、金言(きんげん)とか格言(かくげん)とも呼ばれ、人々の経験や処世(しょせい)の妙理(みょうり)を諭(さと)すことばとして、或は訓戒警句(くんかいけいく)として、人々に語り継がれてきました。
  天草には子供の教育や生活の知恵、農事や気象、自然界の事象などを巧みに捉えた表現や、風刺の利いた俚諺(りげん)・言い伝えがたくさん残っています。
 なるほどネと頷(うなづ)いたり、思わず失笑(しっしょう)したくなるような楽し諺(ことわざ)を集めてみました。                                           編者  鶴田 功  しるす


  あ行
ああいゑばこう言う
 人のことば尻を取ってああだこうだと難癖をつける
合縁奇縁 気が合う合わないも何かの因縁で不思議なものだ
 〈縁は異なもの〉
あいが遠うなりゃ契りも薄い〈去る者日々に踈し〉
 親しい間柄でも遠ざかると次第に交情が薄れる
 ②愛が冷めると約束事も薄らぐ 【間:愛】語呂合せ
挨拶にゃ銭金ゃ要らん(礼節)
 挨拶を交わすのは簡単。誰にも気持ちよく挨拶しよう
逢いたいちゅうても こちゃ知らん 魚名【鮎・鯛・鯒】語呂合せ
 当人どうしの約束事は相談に乗れない
相手のいない喧嘩はできん 相手になるから喧嘩にもなる
会うは別れの始めなり〈生者必滅 会者定離〉〔揚貴妃〕
 会う者は必ず別れる運命にある
青田から飯になるまで水加減
 稲の栽培にも米を炊くにも水加減が難しい(農事)
青田と我子褒めるは馬鹿のうち
 青い稲の頃はすくすく育っていても、思わぬ干ばつや災害に遭 うこと があり、

  収穫してみないと予測ができない。
 ②我が子の自立も予測はできない。
青菜に塩〔女房気質〕 塩をかけるとしおれて元気が無くなる
青菜湯掻きは男に見すんな
 極端に減る事を知らない男に無用な疑いを抱かせない
青は藍より出て藍より青し〈出藍の誉れ〉〔荀子 勧学〕
 青色の染料は藍からとるが、原料の藍より青い
 ②師匠より弟子が優れる 親より子が優れる
秋風と夫婦喧嘩は夜には凪ぐ 夜になると何故か穏やかになる
秋財布に春袋 【秋:空き】【春:張る】語呂合せ
秋鯖は嫁御に喰ゎすんな 美味しい ②寄生虫がいる
商いは牛の涎 〔日本新永代蔵〕 急がず粘り強く交渉せよ
秋なすびは嫁御に喰ゎすんな 〔毛吹草〕
 美味しい ②灰汁が多い ③種が少ない
秋の一日 千日に当る(農事)
 収穫時の一日は貴重 農閑期の千日分に値する
秋の日は釣瓶落し 落日が早い(農事)
秋の夕焼け鎌を研げ 明日は晴天になる(気象)
悪妻は百年の不作〈悪妻は六十年の不作〉
 悪妻は子孫に悪影響を及ぼし繁栄をもたらさない
あくしゃもんにもとりえ
 役立たず者と言われていても人の役に立てる事がある
悪銭 身に付かず 不正に得た金は詰らぬことで使い果てる
上げ膳喰わぬは男の恥 女の気持ち、気づいてよ
朝雨に女の腕まくり 午後は晴れる(気象)
朝雨に傘要らず 午後は晴れる(気象)
朝雨には馬に鞍置け (気象)
朝雷は 井手落とし 井手堰が落ちる程大雨が降る(気象)
朝雷には傘持つな 昼には晴れる(気象)
朝雷に川渡りするな 大雨の前兆(気象)

朝雷に戸を開くんな 大雨の前兆(気象)

朝霧(朝(もや))は晴れ 午後は晴れる(気象)

朝曇り昼日照り 午後は晴れる(気象)

朝酒は女房を質に入れても飲め

 朝酒は何ものにも変えられないほど美味しい

朝鳶は雨、夕鳶は晴れ 朝から鳶を見る時は雨天

浅田で米取れ 深田で藁(わら)取れ 深田は藁の割に収量が少ない

朝茶は蹴るな 朝茶は良薬だから辞退するな 福が増す

朝茶はその日の難逃れ―七里帰っても飲め

朝露は晴れの前ぶれ 午後は晴れる(気象)

朝虹は雨 夕虹は晴れ 朝虹が掛かると雨(気象)

朝寝・朝酒・朝風呂好きの穀潰し

朝寝坊は八石の損早起きは三文の得

 早朝から仕事に励む者には得がある 富貴のもと

朝の一時ゃ夜の三倍 朝の貴重な時間を無駄にするな

朝の茶柱は縁起の良か 福を招く 縁担ぎ

朝は朝星 夜は夜星 昼は梅干食うて働け

 朝早くから夜遅くまで勤勉に働け

朝曼羅(まら)ン立たん者にゃ銭貸すんな

朝飯喰わん者に銭貸すんな

 精力的に働けなくなったらおしまい 金貸す人もいない

朝ぼっとりの夕ばたばた

 朝はゆっくりしていると夕方に忙しくなる

朝靄(もや) 昼日和 朝靄が深い時は晴天になる(気象)

朝焼けは雨、夕焼けは晴れ 朝焼けは雨夕焼けは晴天

足跡は残らんでも筆跡は残る

 文章にしたものは残るから責任が伴う

明日のことは明日明日は明日の風が吹く〉 取り越し苦労

明日のことは分からない一寸先は闇〉 未来は予測できない

明日の百より今日の五十元旦の百より暮れの五十

 少なくとも現実に受け取るほうが良い

味は塩にあり 味付けの秘訣は塩加減だ

足元見てつけこむ 人の弱みに付け込み無理を押しつける

当った者が ふ()の悪か 災難は思わず降り掛かる

当たって砕けろ 何事も挑戦することが簡要 

頭隠して 尻隠さず〔狭客伝〕〈雉の隠れ〉〔源平盛衰記〕

 欠点は全部隠すことはできない 露見すればむしろ滑稽

頭が廻らにゃ尾も廻らん頭が動けば尾も動く

 主立つ者の行動次第で従う者も行動する(主従)

頭剃るより心剃れ〔鴨長明 歌〕

 見た目には僧侶でも道心が無ければ駄目(形式より精神)

頭の上の蠅を追え 人の世話より自分自身の始末が先決だ

あっちを立てればこっちが立たず 両立は難しい

当てゴテなしでにゃ左官なでけん

 【宛ごて(与える)・左官の鏝(こて)】語呂合せ

暑さ寒さも彼岸ぎり―彼岸まで〉(気象)

 残暑も秋の彼岸まで 冬の余寒も春の彼岸過ぎれば薄らぐ

後足で砂を掛くる恩知らず後足で砂をかける

 恩義を受けながら去り際に恩人に迷惑を掛ける

あなぜん風(北西風)に変われば風雨が止む  (気象)

姉女房は蔵が建つ姉様女房―

 生計上手だから暮しにゆとりがある

あばたもえくぼ惚れた欲目〉 愛する者の目には美しく見える

あぶく銭身につかず 不正に得た金は詰らぬことで使い果てる

(あぶ)蜂取らず二兎追うものは一兎をも得ず〉 一度に両方は捕れない

甘いものには蟻が集る 人は利に群がる

甘いものを貰って油断するな 魂胆がある

雨蛙が鳴けば雨  雨蛙は湿度に敏感 (気象)

雨垂れは石をもほがす雨垂れ石を穿(うが)〉〔曽我物語〕

 微力でも継続すれば偉大な力となる

甘やかし子は役立たず 子育ては厳格にするべきだ(教育)

雨はひゆうじ(不精者)の頭に最初に落ちる

 雨の降り初めに気づく程 仕事に散漫(農事)

雨降って地固まる 〔毛吹草〕 いざこざの後でよく纒る

雨前の鰯雲(うろこ雲) 鰯雲(うろこ雲)は雨の前兆(気象)

泡銭(あぶくぜに)身に付かず悪銭身に付かず

 不正に得た金は詰らぬことで使い果てる

過ちを改むるに憚るなかれ〔論語 学而〕

 過失はためらわず改めなければならない

荒草は二十日まで  一番草は田植え後早目の除草が効果的

嵐の前の静けさ 大事件が起きる前の一時の静寂

有るは借銭 無いのが銭

 有りそうで無いのが金 無さそうで有るのが借金

案じてくれるより 金をくれ 現金が有り難い

 人は口先では同情するが実質的な援助はない

案じるより団子汁 案じても仕方ない【案じる・汁】語呂合せ

案ずるより生むが易し〔狂言 悪太郎〕

 実際遣ってみると思ったほどではない 取り越し苦労

あんた百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の生えるまで

 夫婦が健康で長生きすることを称えたことば

按摩つかみ取り 坊主丸儲け あんまと坊主は儲けが多い  


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